連載54 恋の句・愛の句 藺草慶子抄
「うつし身」
ふらんす堂通信126号
霜の夜は君が攫ひに来はせぬか 山田弘子
逢引や冬鶯に鳴かれもし 安住 敦
邂逅は藁火にも似て冬日向 福田甲子
雄滝つらら相思相愛とはなれず 金田咲子
木枯が瞳の奥とほる娶らねば 小橋弘道
マフラーを巻いてやるすこし締めてやる 柴田佐知子
純愛や十字十字の冬木立 対馬康子
ポインセチア教へ子の来て愛質ただされ 星野麥丘人
合鍵はポインセチアの鉢の下 加藤静夫
河豚鍋や愛憎の憎煮えたぎり 西東三鬼
逢はぬ恋おもひ切る夜やふぐと汁 蕪 村
天皇誕生日その恋もまた語らるる 林 翔
うつし身の逢ふ日なからむ賀状書く 渡邊千枝子
心の隙枯野行かねば充たされず 藤田湘子
わかれを云ひて幌おろす白いゆびさき 尾崎放哉
一生の嘘とまことと雪ふる木 寺田京子
雪合戦わざと転ぶも恋ならめ 高濱虚子
汝おもふとき白鳥の
羽
振きけり 甲斐由紀子
よりそへば雪のにほひのかぎりなし 中岡毅雄
人恋えば灰のごとくに雪降れり 橋 關ホ
筆者紹介
藺草慶子(いぐさ・けいこ)
昭和34年9月29日東京生まれ。
昭和57年東京女子大学白塔会にて山口青邨先生に師事。平成元年第一句集『鶴の邑』(牧羊社)刊行。平成9年『野の琴』(ふらんす堂)で第20回俳人協会新人賞を受賞。現在「屋根」「藍生」所属、俳人協会幹事、日本文芸家協会会員。

精鋭俳句叢書serie de la neige
『遠き木』
発行:ふらんす堂
定価2,520円(税込)
平成八年からの作品三百句を集めた第三句集。 |